分福茶釜噺其の三

ぶんぶく茶釜噺の一つです。

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分福茶釜噺其の三

むかし、あるところに、貧乏な古道具屋のおじいさんがいました。

おじいさんは、狭い店に、古い茶碗や、皿だの、壊れた道具を並べて、

「まだ、使えますよ。お値打ちものですよ」

と、いつも 言っていましたが、お客さんは、滅多にありません。

ある朝のこと。早起きのおじいさんが、店の戸を開けると、見事な、茶釜が一つ、置いてありました。

「これは、立派な茶釜だ。どなたが、くださったのかな。ありがたや。ありがたや。」

見れば 見るほど、見事な茶釜です。

おじいさんは、しきりになでたり、さすったり。

「これは、うちの看板商品だ。これなら、お客が、きっとくる」

ほんとうに、その通りでした。

茶釜を見て、足を止めて、店に入って来るお客が、何人もありました。

一つ見事なものがあると、他のものも、みんな値打ちがありそうに、見えるのでしょう。

ほこりをかぶっていた古い提灯が、売れたりしました。

次から次と、お客が来て、今度のお客は、お寺の和尚さんです。

「たいそうな茶釜ではないか。わたしの寺で使いたい。いくらだね」

「はい、これは、うーん」

なんだか、売りたくありません。

「よしよし、三両でどうだ」

三両といえば、おじいさんの見たことも無いたくさんのお金です。

「は、はい、はい。ありがとうございます」

「大切に、寺に届けてやってくれ」

「かしこまりました。和尚様」

和尚さんは、茶釜のふたを取って、覗いてみました。

「おや、おや。だれが、水を、くんだのかな」

しばらくすると、茶釜は、ぶんぶんぶく、ぶんぶんぶくと歌いだしました。

「不思議不思議。火にかけないのに、お湯が沸く」

お茶をたててみると、そのおいしいこと。

それで、おかわりをしましたが、茶釜の湯は減りません。

「うーん。寺の宝にして、ぶんぶく茶釜と名をつけよう。」

和尚さんは、ぶんぶく茶釜を棚に飾って、うれしくて、にこにこして、お出かけ。

その後で、留守番の小僧さんが、棚の茶釜を、見つけました。

「洗って、お湯を沸かしましょう」

ごしごし、ごしごし。

すると、声がしました。

「小僧さん、痛い、痛いよ。やめておくれ」

「えっ?誰もいないなあ。気のせいか。さあ、炉にかけて、炭をついで」

ふうふう、吹いて、火は、かっか。

すると、

「あ、あちち、あつうーい!」

茶釜に足が出て、横っ飛び。

一目散に、逃げ出してしまいました。

おじいさんが、奥で、ご飯を食べて、店に戻ってみて、びっくり!

「あれれ、茶釜がもどってきてる、へんだなあ」 

よくよく見ると、太いしっぽが、ぶらーん ぶらーんと、揺れています。

「ははあ。いたずらだぬきだったのか。これこれ、頭を出しなさい」

ぴょこんと、頭が出て、足が出ました。

おじいさんは 言いました。

「知らずに、和尚さんに、三両ももらってしまったよ。いたずらは、困るんじゃよ」

「おじいさん、いたずらじゃありません。前に人に捕まったとき、おじいさんが、お金を払って、逃がしてくれたでしょう。あのときのたぬきです。やさしいおじいさんが好きになって、一緒に暮らしたくて来たんです」

「どうして、茶釜に化けたんじゃ?」

「それしか、化けられないの」

おじいさんは、腕を組んでしまいました。

かわいいたぬきですが、和尚さんには 三両返さなくてはなりませんし、もう、店に飾っておくのも、お客を騙すみたいで、できません。

そうすれば、前の通りの貧乏暮らし。たぬきの食べるものも買えません。

茶釜のたぬきが、言いました。

「化けるのは、一つだけだけれど、綱渡りなんかは うまいんです。おじいさん、見世物をして、働かせてください」 

  さあさあ、ぶんぶく茶釜の綱渡り。

  ちんちんちちちん、

  どどどん、どんどんどん、

  ちんちん・・・

鐘と太鼓は、おじいさん。

評判、評判、面白いと凄い評判になりました。

おじいさんと、ぶんぶく茶釜のたぬきは、軽業の見世物をして、働いて、楽しく暮らしました。

昔むかしのお話です。

茶釜狸